旅行会社「てるみくらぶ」が虚偽の決算書類を作成し、
銀行から融資名目で現金約2億円をだまし取ったとして、
詐欺などの疑いで、同社社長(67歳)と
元経理責任者(36歳)の2人が逮捕されたという事件は、
まだ皆様のご記憶にも新しいかと思います。

逮捕の容疑は、2人で共謀し、経営状態が良好であるかのように
見せかけた決算書を数回にわたり三井住友銀行に提出し、
2億円をだまし取ったとしています。

28年9月期では、決算書上は1億2,000万円の営業利益を
計上していたが、実際には50億円の営業損失を
計上していたとのこと。

同社は、破綻直前まで「現金一括入金キャンペーン」とする広告を出したり、
契約者に早期に旅行代金を支払うよう求めたりしており、
完全に資金繰りが悪化した自転車操業の状態だったと見られています。

粉飾の手口としては、在庫を持つようなビジネスでもありませんので
棚卸資産の過大計上などは考えられず、完全に推測ではありますが、
上記の契約者からの前金を、前倒して売上に計上することも
粉飾の手口の一つであったのだろうと思われます。

粉飾決算は、その手口によっては見抜くことが難しく、
今回、メガバンクの一つであり、非常に高度な審査システムを
持っているはずの三井住友銀行でさえ騙されたことが
それを証明しています。

例え詐欺にあったとはいえ、預金者から預かったお金を融資している立場で、
しかも、株主に対する利益責任も非常に大きな三井住友銀行の、
この融資の審査に携わった行員の責任の取らされ方は
どのようになるのだろうかと、銀行員の仕事の責任の重さを改めて感じますし、
その恨みはとても深いものと思います。

【決算書のどこを見れば粉飾を見抜けるのか】
以前、現役銀行員の方との情報交換の場で、
上記の「てるみくらぶ」の話題になった際に、
銀行員の方は実際に粉飾決算をどこで見抜くのか
聞いてみたことがあります。

銀行員の方は、直前期の決算書一期分だけで分析することは絶対になく、
必ず過去3~5期分の損益計算書と貸借対照表の数値を
横に並べた一覧表を見ながら、トレンド分析をしています。

貸借対照表については、売掛金月商倍率や棚卸資産月商倍率のトレンドを見て、
年々数値が上がっていないかどうか確認することで架空売上・架空在庫を見抜き、
役員貸付金や仮払金、現金勘定が増えていれば、
本来経費にすべき支出をこれらの勘定科目に突っ込んで黒字化してないかどうか、
など疑いの目でもって決算書を見ています。
企業から提出された決算書を鵜呑みにすることは決してありませんので
ご注意ください。

しかし、上記の分析手法よりももっと簡単に一発で粉飾を見抜く方法があるそうで、
それが「税引後当期利益」の数字だそうです。

その銀行員の方が言っていた目安ですが、
「ざっくりですが、年商3億円以下の企業で100万円以下の利益、
年商3億円以上の企業で300万円以下の利益ですと、
まず間違いなく粉飾しているという目で決算書を見るようにしています」
とのことでした。

理由を尋ねますと、「多くの経営者の方は赤字決算になると
銀行が全く融資をしてくれなくなると思い込んでいらっしゃいます。
かと言って、そういう不安を抱えた状態の会社は資金繰りも厳しいことが多く、
できるだけ納税は抑えたいと思われます。
その結果、ぎりぎりの黒字額で決算を終えられるのです。

ただ、銀行員もそういう心情は理解していて、上記のような利益を出す会社は、
今期の売上と仕入がこれだけで、経費をいくら使ったから利益がいくら出た、
ではなく、銀行対策のために今期の利益はいくらにしようか?
という結論から辻褄合わせで決算書を作っていらっしゃることも分かっています。
こういう会社様には融資は非常に慎重になりますので、
保証協会付きなら取り組みますが、プロパー融資はかなり厳しくなると思います」
とのことでした。

4月1日より保証協会の制度が変わるため、
金融機関はプロパー融資も積極的に取り組まざるを得なくなります。
プロパー融資ですと当然に審査は厳しくなりますので、
最終利益額にはくれぐれもご注意ください。